大学生最後の年、私は、社会人になるための準備をしていた。
大学が教育学部で、小学校の先生になるというのが、妥当な道だったのだけど、私自身が妥当な人間でなかったために、小学校の先生にはなれないなと実感していた。
でも、子供に関わる仕事がいいなと思っていたころ、あるこどもたちの家庭教師を紹介された。
それが、私の社会人としてのはじめてのお仕事になった。
こどもたちは、6人姉妹で、最初、まったく心を開いてくれなかった。
それもそのはず、家庭教師を必要としていたのは、彼女たちではなく、彼女らの母親で、本人達は勉強する気など少しもなかった。
でも、わたしはなぜか、引き下がらなかった。
「家に住み込ませてください」とお願いして、彼等といっしょに生活をし、ご飯を食べ、遊びに行って、泣いて、笑って、怒って、やれること全部やった。
いつごろからか、彼等と仲良くなった。
相変わらず、一緒に、泣いて、笑って、怒る毎日だったが、楽しかった。
今思えば、私が彼等を支えているつもりだったけど、彼等がわたしを支えてくれていた。
わたしを生かしてくれていた。
気の利いたごはんは作れなかったけど、それでも「カテ(私のこと)のおにぎりが一番おいしい」と言って、よく食べてくれたみんなのことが忘れられない。
6年間一緒に過ごした日々が私の「生きる」原点だ。
今はなかなかみんなで集まることができなくなったけど、わたしは彼等のことが、これからも永遠に大切です。
本当にありがとう。